【初心者向け】クレスの飼育ガイド②|特性を知って飼育環境を整えよう

【初心者向け】クレスの飼育ガイド②|特性を知って飼育環境を整えよう

1. はじめに
2. クレステッドゲッコーってどんな生き物?
2-1. 見た目のかわいさと種類の豊富さ
2-2. 和名は「オウカンミカドヤモリ」
2-3. 原産地はニューカレドニア:自然界での暮らし
2-4. 基本情報まとめ
2-5. 「壁チョロ系」ヤモリの秘密
2-6. ハンドリングはできるの?
2-7. 尻尾の「自切」に注意
3. 飼育環境の整え方
3-1. ケージ:高さがあるものを選ぼう
3-2. 温度管理:クレスの健康を左右するポイント
3-3. 湿度管理:60〜80%が理想的
3-4. 床材の選び方:足にやさしく、清潔に
3-5. ケージレイアウト:立体空間を作ろう
3-6. 水入れと照明
4. おわりに|「飼いやすいけど、知るべきことは多い」

1. はじめに

クレステッドゲッコー(和名:オウカンミカドヤモリ)は、そのユニークな見た目と飼いやすさから、世界中の爬虫類ファンに愛されている人気のヤモリです。

「壁をチョロチョロ登る姿がかわいい」「見た目がかっこいい」「レイアウトにもこだわりがいがある」といった理由で、爬虫類飼育初心者の“はじめの一匹”として選ばれることも少なくありません。

本記事では、クレステッドゲッコーの基本的な生態や魅力、そしてお迎えに必要な飼育環境の整え方について、初めての方にもわかりやすく解説していきます。

2. クレステッドゲッコーってどんな生き物?

2-1. 見た目のかわいさと種類の豊富さ

クレスは手のひらサイズで、猫のような瞳やペロッと舌を出す仕草など、どこか哺乳類のような可愛らしさがあります。頭の両脇から背中にかけて伸びる「クレスト(王冠のような突起)」が名前の由来で、爬虫類らしからぬ存在感を放ちます。

さらに、色や模様に多様性があり、「モルフ」と呼ばれる品種のバリエーションが豊富。ノーマル、ハーレクイン、ダルメシアン、ファイア、リリーホワイトなど、自分好みの“推しクレス”を見つける楽しさもあります。

ちなみに… モルフ(Morph)とは、体色や模様の遺伝的なバリエーションのこと。クレスのモルフには繁殖によって意図的に生み出されたものも多く、コレクション性も高いです。

2-2. 和名は「オウカンミカドヤモリ」

日本での正式名称は「オウカンミカドヤモリ」。名前はちょっと堅苦しいですが、ペットショップや飼育界隈では「クレス」と呼ぶのが一般的です。

2-3. 原産地はニューカレドニア:自然界での暮らし

クレスは南太平洋に浮かぶ島「ニューカレドニア」原産。森林地帯に多く生息し、木の上で生活する「樹上性」のヤモリです。昼間は木の陰でじっと休み、夜になると活動を開始する「夜行性」という生活サイクルを持っています。

1994年に野生で再発見されるまで、クレステッドゲッコーは絶滅したと思われていました。 現在では国際自然保護連合(IUCN)により絶滅危惧種(EN)に指定されています【Bauer & Sadlier, 1994】。

2-4. 基本情報まとめ

 

項目 内容
体長 約17〜20cm(尻尾含む)
体重 成体で45〜50g程度
寿命 約7〜10年。飼育環境が良ければ15〜20年生きることも
性格 穏やかでハンドリングも可能(個体差あり)
食性 雑食性(果物、昆虫)
活動時間 夜行性
生息形態 樹上性。上下に動ける環境が必要

 

2-5. 「壁チョロ系」ヤモリの秘密

クレスの代名詞といえば「壁チョロ系」。なぜガラスや垂直な壁を自由自在に登れるのかというと、指先にある「趾下薄板(しかはくばん)」という微細なヒダが関係しています。

この構造により、表面に吸着する力が働き、ツルツルのガラスにも張り付きます。ただし、この部分に砂やゴミが詰まると登れなくなるため、床材選びは非常に重要になります(後述します)。

2-6. ハンドリングはできるの?

クレスは比較的穏やかな性格で、ハンドリングも可能とされています。手のひらに乗せてもパニックにならず、静かにしている子も多くいます。ただし、個体差があり、嫌がる子や急にジャンプする子もいます。

ストレスを与えすぎると健康に悪影響を及ぼすため、無理なハンドリングは避けてください。

カリフォルニア大学デービス校の研究では、過度なハンドリングが爬虫類の行動異常や免疫低下につながる可能性があると報告されています【Peveler & Bates, 2018】。

2-7. 尻尾の「自切」に注意

クレスは危険を感じると「自切(じせつ)」と呼ばれる行動で尻尾を切り離します。 驚いたとき、過度に触られたとき、掃除で急にケージに手を入れたときなどがきっかけになることがあります。

ポイントは、一度切れた尻尾は再生しないということ。見た目には変化がありますが、生活に支障はなく、健康にも大きな問題はありません。ただ、尻尾はバランスを取る役割もあるため、自切を防ぐよう穏やかな環境を整えることが重要です。

3. 飼育環境の整え方

3-1. ケージ:高さがあるものを選ぼう

クレスは木の上で生活するヤモリです。平らなケージではストレスが溜まり、体調を崩す原因になることも。

【おすすめケージサイズ】

  • 最小限: 30×30×45cm(通称3045)
  • 理想: 45×45×60cm(より広く立体的なレイアウトが可能)

側面開閉式で、フタにロックが付いているものが安心。通気性が良く、掃除のしやすい構造であれば、なお快適です。

3-2. 温度管理:クレスの健康を左右するポイント

昼夜で適温は異なりますが、日本の室温でも概ね飼育可能です。ただし、冬と夏の温度差には要注意。

時間帯 目安温度
昼間 22〜28℃
夜間 18〜22℃
成長に最適 24〜28℃

ベビーの時期や体調を崩している時期は加温管理が特に重要です。夏場は30℃以上にならないよう冷却グッズの活用を。

ヒーターを使う際はケージの外側にパネルを貼る形式が安全です。温度計はケージ内の複数箇所に設置し、正確なモニタリングを行いましょう。

3-3. 湿度管理:60〜80%が理想的

クレスは乾燥に弱く、湿度が足りないと脱皮不全や食欲不振を起こすことがあります。逆に、蒸れすぎても病気の原因になるため、適度な湿度コントロールが大切です。

【湿度管理のコツ】

  • 朝晩2回の霧吹きで水滴をケージ全体に
  • 植物や壁に水滴をつけるとクレスが舐めて水分補給
  • 床材の保湿性を活かす(ココヤシなど)
  • 必ず湿度計を設置し、常にモニタリング
Herpetological Review(2016年)でも、湿度不足は脱皮トラブルの主因とされており、定期的な霧吹きがクレスの健康維持に不可欠と報告されています。

3-4. 床材の選び方:足にやさしく、清潔に

クレスの指先は繊細なので、趾下薄板に異物が入らない床材選びが肝心です。

床材 特徴
キッチンペーパー 安価・取り替えやすい・初心者におすすめ
ココヤシ繊維 保湿力高め・自然な見た目
ヤシガラ 通気性◎・臭い対策にも
バイオマット インテリア性◎・観葉植物との相性よし
砂や土 使用NG(足裏に詰まりやすい)

 

3-5. ケージレイアウト:立体空間を作ろう

クレスが上下左右に自由に動き回れる「立体的なレイアウト」が理想です。

【設置アイテム】

  • 止まり木・流木・コルクなど
  • 人工植物や突っ張り棒
  • 壁面に取り付けられる足場
  • 隠れ家(奥まった暗い空間をつくる)
 海外の飼育サイト「Gecko Time」では、立体移動が確保されたケージがフロッピーテールの予防につながるとされ、壁ばかりに頼らない水平面の確保が重要と説明されています。

3-6. 水入れと照明

  • 水入れは必ず設置。 落とされにくい地置きタイプが安心
  • 水は最低2日に1回交換し、汚れや乾燥を防ぎます
  • クレスは霧吹きの水滴を舐めて水分補給する習性あり
  • 照明は基本不要。 植物育成や鑑賞目的で弱いUVAライトを使う場合もありますが、UVBは基本不要です

4. おわりに|「飼いやすいけど、知るべきことは多い」

クレステッドゲッコーは、性格も穏やかで比較的飼いやすいヤモリですが、命ある動物としてのケアは決して軽く考えてはいけません。

この記事でご紹介した「生態」「性格」「ケージの整え方」を参考に、ぜひクレスのいる生活を楽しくスタートさせてください!

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