【初心者向け】イエアメガエルの飼育ガイド② |餌と給餌のポイント

イエアメガエルに元気でいてほしい——そう思ったとき、大切なのが毎日の「ごはん」です。どんな餌を、どれくらい、どんなふうにあげればいいのか。はじめての方でも迷わずできるように、成長に合わせた餌の種類や量、栄養のポイントを詳しく解説します。
目次
1. イエアメガエルは完全な昆虫食
1-1. 基本の主食〜コオロギ・ミルワーム・デュビアローチ
1-2. 生き餌にこだわる理由
1-3. 与えすぎNGな虫
2. 餌の種類と特徴
2-1. それぞれのメリット・デメリット
2-2. 生き餌が苦手な人への代替案
2-3. 初心者にも使いやすい「イエアメガエルバイト」
2-4. 切り替え時の注意点
3. 餌のサイズと頻度は「成長段階」で変わる
3-1. ベビー・ヤング・アダルト別の餌サイズと与え方
3-2. 頻度の目安
3-3. 食べ残しのチェックと処理方法
4. 給餌のコツ
4-1. 初心者が失敗しやすいポイント
4-2. ピンセット給餌テク
4-3. 食いつきが悪いときの工夫
5. 栄養補助の重要性と方法
5-1. カルシウムとビタミンD3の必要性
5-2. ダスティングとガットローディング
5-3. 栄養不足で起こるリスク
6. 肥満に注意!特にアダルト期は要管理
6-1. よく食べる=健康ではない
6-2. 太りすぎのサイン(手足・顔まわり)
6-3. 食事制限と適正体型を保つ工夫
7. まとめ〜「ちゃんと食べて、元気に育てる」ために
7-1. 餌やりは観察と信頼関係づくりの時間
7-2. 不安があれば少しずつ慣らしてOK
1. イエアメガエルは完全な昆虫食
イエアメガエルはその名の通り「アマガエル」の一種ですが、食性はやや特殊です。完全な昆虫食であり、植物質のフードは一切口にしません。自然界では、主に地表や木の上に出現する昆虫を見つけては、すばやく舌で捕食します。飼育下でもその習性は変わらず、与える餌は動物性タンパク質を含む昆虫が基本になります。
1-1. 基本の主食〜コオロギ・ミルワーム・デュビアローチ
主な餌として使われるのが、フタホシコオロギやヨーロッパイエコオロギ、それにミルワームやデュビアローチ(アルゼンチンモリゴキブリ)です。コオロギは動きが活発で食いつきがよく、栄養バランスも悪くありません。デュビアローチは脂肪分が少なめで、長期的な主食としても適しています。一方、ミルワームは脂肪が多く、嗜好性が高いため“おやつ”程度にとどめましょう。
1-2. 生き餌にこだわる理由
イエアメガエルは動くものにしか反応しません。死んだ虫や人工フードには基本的に興味を示さず、目の前で動くものにだけ飛びつきます。これは野生下での捕食本能によるものです。飼育下でもその習性は変わらないため、活きのいい餌を使うことが重要です。実際、動きが鈍いとピンセットで目の前に出しても無反応になることがあります。
1-3. 与えすぎNGな虫
ミルワームは手に入りやすく、よく動くために重宝されがちですが、脂質が高く、キチン質も多いため消化に負担がかかります。与えすぎると、肥満や消化不良を引き起こすことがあるため注意が必要です。特にベビー期やヤング期には栄養バランスが偏りやすいため、主食として与えるのは避け、週1回程度の嗜好品と考えるとよいでしょう。
日々の餌選びが、イエアメガエルの健康を左右します。動きと栄養バランスに注目し、「何を」「どれだけ」与えるかを意識することが、元気な飼育への第一歩です。次は、餌の種類ごとのメリットと使い方について詳しく見ていきましょう。
2. 餌の種類と特徴
イエアメガエルの飼育では、「どんな餌を選ぶか」が毎日の健康管理につながります。ここでは、生き餌・冷凍餌・人工フードそれぞれの特徴をふまえ、初心者でも実践しやすい給餌方法を解説します。
2-1. それぞれのメリット・デメリット
種類 | メリット | デメリット |
---|---|---|
生き餌 | 食いつきが良い/自然に近い | 飼育が必要/脱走のリスクあり |
冷凍餌 | 保管が楽/手間が少ない | 動かないため反応が鈍いことがある |
人工フード | 長期保存可能/管理が簡単 | 食いつきに慣れるまで時間がかかる |
生き餌は最も自然に近い方法ですが、手間や管理が必要です。冷凍コオロギは衛生面で安心ですが、動きがないためカエルが気づかないこともあります。人工フードは慣れれば便利ですが、最初は見向きもしない個体も多いです。
2-2. 生き餌が苦手な人への代替案
虫が苦手な方にとって、生き餌の管理は大きなハードルです。そんなときは、冷凍コオロギや冷凍デュビアを使うと良いでしょう。トングでつまみ、口元で小さく動かせば反応する場合もあります。また、市販の人工フードも選択肢になりますが、初めから食べてくれる個体は少数派なので、根気が必要です。
2-3. 初心者にも使いやすい「イエアメガエルバイト」
「人工フードって、どうせ食べてくれないでしょ?」そんなふうに思っていた方にこそ、ぜひ試してほしいのが「イエアメガエルバイト」です。
このフード、じつは中身の90〜95%がコオロギ粉末というこだわり。魚粉や添加物は使っていないので、自然に近いにおいと味でカエルの食欲をぐっと引き出してくれます。実験でも、含有率が高いほど食いつきが良いというデータがあるそうです。
作り方もかんたんで、粉に少し水を加えて練るだけ。カエルのサイズに合わせて調整できるから、ベビー期や体調を崩したときにも使いやすいのがポイントです。
栄養もばっちりで、小さじ1杯=コオロギ約9匹分の栄養がとれるから、管理も楽ちん。しかも、常温で半年保存OK・保存料なしだから、手間がかからず続けやすいのも魅力です。
「生き餌はちょっと…」という方も、「忙しくて用意するのが大変…」という方も、このフードならきっと安心して使えるはず。カエルもよく食べてくれて、飼い主もラクになる。そんなフードです。
2-4. 切り替え時の注意点
人工フードや冷凍餌に切り替える際は、一気に変えるのではなく、生き餌との併用から始めるのがポイントです。たとえば、最初は生きたコオロギにフードを添えて反応を見る。あるいは、フードに動きを加えるなどの工夫が必要です。実際に診療でも「フードをピンセットで小刻みに揺らしたら食べた」という例は多くあります。
どの餌が正解かは、飼育者のライフスタイルとカエルの個体差によって変わります。大切なのは、「無理なく続けられる方法」を見つけることです。次は、成長段階に応じた餌のサイズと頻度について見ていきましょう。
3. 餌のサイズと頻度は「成長段階」で変わる
イエアメガエルは成長にともない、食べられる餌のサイズや必要な給餌頻度が大きく変わります。適切な餌のサイズを選び、与えるタイミングを見極めることで、健康な発育と肥満予防につながります。
3-1. ベビー・ヤング・アダルト別の餌サイズと与え方
成長段階ごとに、餌のサイズと与え方には工夫が必要です。
・ベビー期(体長3〜4cm):ピンヘッドコオロギや小型のイエコオロギ。頭より小さいサイズが目安。消化能力が未発達なため、1匹ずつゆっくり与えましょう。
・ヤング期(4〜6cm):中サイズのコオロギやデュビアが適しています。食欲が旺盛な時期ですが、数を与えすぎないよう注意が必要です。
・アダルト期(6cm以上):Lサイズのコオロギ、デュビア、少量のミルワームなど。大型の餌でも問題ありませんが、肥満に配慮して量は調整します。
とくにベビー期は内臓がまだ弱く、大きな餌を飲み込むと喉に詰まる事故も報告されています。
3-2. 頻度の目安
餌の頻度も成長に応じて変えましょう。
・ベビー期:毎日1回
・ヤング期:1日おきに1回
・アダルト期:週2〜3回程度
アダルト期は食べすぎによる脂肪肝や腸閉塞のリスクがあるため、間隔を空けて適正な量を与えることが大切です。
3-3. 食べ残しのチェックと処理方法
与えた餌を放置すると、ケージ内の湿度や衛生環境に悪影響を及ぼします。特に生き餌は、カエルの皮膚をかじったり、夜間にストレスの原因となることもあります。
・食後10分ほどで反応がない餌は必ず取り除く
・床材の下や止まり木の裏もくまなくチェック
・ピンセットや小型の網で手早く回収するのがコツです
成長段階ごとの餌の調整は、健康管理の基本です。「どのサイズを、どれくらい、いつ与えるか」を意識するだけで、トラブルをぐっと減らすことができます。次回の給餌から、ぜひ見直してみてください。
4. 給餌のコツ
イエアメガエルの給餌には、ピンセットを使う方法がもっとも一般的です。ただし、使い方を誤ると食べてくれなかったり、逆にストレスを与えてしまうこともあります。ここでは、初心者がつまずきやすい点と、実際に診療現場で効果的だったテクニックを紹介します。
4-1. 初心者が失敗しやすいポイント
ありがちなミスの一つは、餌をピンセットで強くつかみすぎることです。虫がつぶれると、においが変わってしまい、カエルが興味を示さないことがあります。また、口元から遠すぎる位置で動かしてしまい、存在に気づいてもらえないケースもよく見られます。さらに、目を合わせすぎると警戒して口を閉じたまま動かなくなる個体もいます。
4-2. ピンセット給餌テク
給餌の基本は「動きで興味を引く」ことです。こんなやり方がおすすめです。
1.ピンセットで虫の胴体を軽く挟む
2.カエルの口元1〜2cmの距離まで近づける
3.水面の小波のように細かく上下に揺らす
4.一瞬止めて、再び動かすことで反射的に反応を引き出す
とくに、寝起きやぼんやりしている個体には、この“小刻みな動き”が効果的です。
4-3. 食いつきが悪いときの工夫
どうしても食べないときは、活きの良い餌をそのままケージに入れてみるのも一手です。たとえば、夜間にコオロギを放しておくと、カエルが自分から狩りを始めることがあります。また、給餌の時間を夜の消灯直後に合わせると反応がよくなる傾向があります。これはイエアメガエルが夜行性であることが関係しています。
ピンセット給餌は「技術」というより「慣れ」と「観察」です。何度か繰り返すうちに、その子に合った動きが見えてくるはずです。焦らず、じっくり信頼関係を築いていきましょう。
5. 栄養補助の重要性と方法
イエアメガエルは昆虫を主食とするため、自然下ではさまざまな虫を捕食し、必要な栄養素をまんべんなく摂取しています。しかし、飼育環境では餌の種類が限られがちで、特にカルシウムとビタミンD3が不足しやすい点に注意が必要です。これらを補うための具体的な方法と注意点を紹介します。
5-1. カルシウムとビタミンD3の必要性
カルシウムは、骨や筋肉の形成・神経伝達に関わる重要なミネラルです。そして、ビタミンD3はそのカルシウムを体内に吸収させる働きを担っています。室内飼育では日光(紫外線)を浴びる機会がほとんどないため、ビタミンD3の不足が起こりやすく、成長期のカエルでは骨が変形する病気(くる病)の原因にもなります。
5-2. ダスティングとガットローディング
不足しがちな栄養素は、次の2つの方法で補うことができます。
・ダスティング:与える前のコオロギなどに、カルシウムパウダーやビタミン剤をまぶす方法。餌が白くなる程度でOK。週に2〜3回程度が目安です。
・ガットローディング:餌虫に栄養価の高いフード(例:小松菜粉末や市販の昆虫用栄養剤)を24時間以上与えておき、その虫ごと栄養を届ける方法です。特に冷凍餌ではできないため、生き餌のときに活用しましょう。
動物病院でも、特にベビー期には両方を併用することが推奨されるケースが多くあります。
5-3. 栄養不足で起こるリスク
カルシウム不足の症状として、手足のゆがみ・背骨の曲がり・食欲不振が見られます。重度になると動けなくなり、治療が難しくなることも。ビタミンD3不足が長く続くと、内臓機能にも影響が及び、感染症にかかりやすくなる傾向があります。見た目には元気そうでも、骨の密度が下がっていることも多いため、早めの予防が重要です。
「餌だけで足りる」と考えず、サプリメントは“命を守る道具”として捉えてください。ちょっとした手間で、防げる病気はたくさんあります。今日の給餌から、ダスティングやガットローディングを意識して取り入れてみましょう。
6. 肥満に注意!特にアダルト期は要管理
イエアメガエルは比較的おとなしく、動きも少ないため、餌を与えすぎるとすぐに太ってしまいます。特にアダルト期には基礎代謝が下がるため、食べすぎ=健康という考え方は大きな間違いです。肥満は寿命や病気のリスクに直結するため、しっかり管理していく必要があります。
6-1. よく食べる=健康ではない
「食べたがるから、健康」というのは人間にも当てはまらないように、カエルにも当てはまりません。イエアメガエルは捕食本能が強いため、満腹でも動くものがあれば反射的に口を開けてしまいます。このため、与えられた分だけ食べる=健康、とは限らず、むしろ肥満が進行しているサインかもしれません。
6-2. 太りすぎのサイン
太ってきたカエルは、まず手足の付け根や顔まわりに脂肪がつきます。特に前足の根元がむちっと太く、頭が丸くなってきた場合は要注意。さらに進行すると、後ろ足の動きが鈍くなったり、給餌後に動かなくなるなどの変化が見られます。動物病院では「動きは少ないのに、体重だけが増えている」というケースが多く、気づいた時には内臓脂肪がたまっていたということもあります。
6-3. 食事制限と適正体型を保つ工夫
アダルト期の給餌は週に2〜3回を目安にし、ミルワームなど脂肪の多い餌は控えめにします。また、飼育者の都合で食事の時間が固定されがちですが、日を空けることにも意味があると理解しましょう。個体差がありますが、指でお腹を軽く触って“やわらかすぎる”“張りすぎている”と感じたら、一度給餌ペースを見直すサインです。
太らせないことは、長く元気に飼うための基本です。「かわいそうだから」と毎日与えていたら、逆に病気を早めてしまうことになります。健康な体型を維持するためにも、“食べさせない勇気”を持ちましょう。
7. まとめ〜「ちゃんと食べて、元気に育てる」ために
イエアメガエルの飼育で、餌やりはただの作業ではありません。食欲や動きの変化を見ながら体調を読み取る、大切なコミュニケーションの時間です。毎日の「食べる」が健康を支え、信頼関係を深めていく土台になります。
7-1. 餌やりは観察と信頼関係づくりの時間
給餌のとき、カエルの目の動きや口の開け方、餌への反応をよく観察してみてください。普段はおとなしい子が急に飛びつかなくなったり、口元で餌を見ても動かないようなときは、体調を崩しかけているサインかもしれません。実際、診療でも「いつもより食べ方がおかしい」という飼い主の気づきが早期発見につながることは多いです。また、ピンセット給餌を続けていると、カエルが飼い主の手や動きに慣れて、餌=安心できる時間として覚えていきます。
7-2. 不安があれば少しずつ慣らしてOK
初めての飼育では、餌の量や頻度、栄養管理などわからないことだらけです。でも、完璧を目指さなくても大丈夫。最初はうまく食べてくれなくても、徐々に慣らせば必ず食べてくれるようになります。ポイントは、「焦らないこと」と「観察を続けること」。毎日の小さな変化を見逃さず、必要に応じて獣医師に相談するのも良い方法です。
「食べること」は、カエルの生きる力そのものです。しっかり観察しながら、カエルにとって安心できる食事時間をつくってあげましょう。迷ったときは、基本に立ち返ることで答えが見つかるはずです。
正しい餌やりは、イエアメガエルとの信頼関係づくりにもつながります。今回紹介した内容を参考に、日々の観察と管理を続けることで、カエルが元気に育つ環境を整えていきましょう。