はじめに
ペットとしての「カエル」と聞いて、多くの方は意外に思うかもしれません。しかし近年、両生類の中でも特に人気が高まっているのが「イエアメガエル」です。穏やかな性格と、どこか微笑んでいるような表情。飼育がしやすく、人の手にもよく慣れる個体が多いことから、初心者からベテランまで幅広い層に支持されています。
今回のラボでは、実際にイエアメガエルを飼育している立場から、給餌に関する内容を中心にイエアメガエルのごはんについて丁寧にお伝えしていきます。
私自身、爬虫類・両生類の飼育経験は複数ありますが、飼育に必要な知識をしっかり整理しつつ、飼い主としての日常の気づきやエピソードも交えてお届けします。これから飼育を始めたい方の参考になれば幸いです。

1-1. イエアメガエルってどんなカエル?特徴と魅力 🐸
イエアメガエル(White's Tree Frog)は、オーストラリアやニューギニアに生息する中型の樹上性アマガエルです。最大で10〜12cm程度に成長し、ツルツルとした明るい緑色の体が特徴です。性格は温厚でおとなしく、人の手からも餌を食べるなど人慣れしやすいため、ペットとして人気があります。寿命は10〜15年と長く、環境や管理が良ければそれ以上生きることも。臭いも少なく、ケージ内を清潔に保てばほとんど気になりません。適切な温度・湿度管理と給餌ができれば、初心者でも安心して飼育できます。
🌿 飼育者のひとり言
個人的にはなんといっても笑っているように見える表情がたまらないですね。愛くるしい表情を見るとかなり癒されます。たまに口を半開きでぼーっとしてたり、体勢がすごく崩れていたりとゆるキャラが好きな人にはたまらない生体だと思います。
1-2. イエアメガエルとツノガエルの野生でのちがい:地面派と木登り派
イエアメガエルとツノガエルは、どちらも人気のあるペットとして知られるカエルですが、野生での暮らし方には大きな違いがあります。それは、イエアメガエルは「木の上に住むカエル」。ツノガエルは「地面に住むカエル」だということです。
🌳 イエアメガエル
オーストラリアやニューギニアなどの熱帯雨林に生息していて、主に木の上で生活しています。長い脚と吸盤のついた指先を使って枝や葉の上を移動し、空中の虫を捕まえて食べています。
彼らが好むのは昆虫やクモ、ミミズ、小さな両生類などですが、動くものであれば食べようとする習性があります。ただし、ツノガエルほど無差別に何でも丸飲みするというわけではありません。樹上で動き回って餌を探すため、食べる量は少なめでも健康を保つことができます。
そのため飼育下でも、ジャンプ力や登る習性に合わせて高さのあるケージが必要になり、脱走にも注意しなければなりません。
🍂 ツノガエル
南米の湿った森林や草原に生息しており、地面に穴を掘って半分土に埋まるような形で暮らしています。普段はほとんど動かず、目の前を通った獲物をじっと待ちかまえる「待ち伏せ型」のハンターです。
彼らが食べるものはとても幅広く、昆虫、ミミズ、小さなカエル、トカゲ、ネズミのような小動物、さらにはヘビまでも口に入るサイズであればなんでも食べてしまいます。獲物を丸飲みする力強いアゴを持っており、一度に大量のエネルギーを得た後は、しばらく何も食べないことも普通です。
このような食性のため、飼育下では「なんでも食べようとするけど、食べすぎが命取りになる」という点に注意が必要です。
💡 食性と暮らしの違いが、飼育にも関わる
このように、ツノガエルとイエアメガエルは、野生ではまったく違う生活スタイルを持っています。
このちがいは、私たちがペットとして飼うときの環境づくりや餌の管理にも影響します。それぞれの習性や性格をよく知って、カエルにとって快適な環境をつくることが大切です。
食事について 🍽️
2-1. 野生と飼育下で異なるイエアメガエルの食性
野生のイエアメガエルは、完全な「肉食性」です。動いていれば何でも食べてしまうその貪欲さは驚くほどです。一方、飼育下では多様な餌の再現は困難です。動く餌でないと認識しないという特性があるため、ピクリとも動かない人工餌や冷凍餌は、飼育者が工夫して「動いているように見せる」ことで、少しずつ慣れさせていく必要があります。

2-2. イエアメガエルに与えられる餌の種類と特徴
● 生き餌(コオロギ、デュビアローチ、ミルワームなど)
野生の捕食本能を刺激するため最も反応が良いです。
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コオロギ:栄養バランスが良く主食に最適。
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デュビアローチ:高たんぱくで扱いやすい。
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ミルワーム:高脂肪なので「おやつ」として少量に。
⚠️ 注意点
生餌にはカルシウムやビタミンD3が不足しているため、週2〜3回の「ダスティング」や「ガットローディング」が必須です。
● 冷凍餌・小魚(メダカ、金魚など)
生餌の管理が難しい場合に便利です。
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冷凍コオロギ/デュビア:栄養価は良好だが、動かす工夫が必要。
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魚類(メダカ・金魚):主食には不向き。ご褒美程度に。
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冷凍マウス:高カロリーで肥満リスク大。月1回以下に。
⚠️ 注意点
冷凍餌は栄養が偏りやすいため補助的に。鮮度を保って与えましょう。
● 人工飼料(練り餌・ペレット状)
近年品質が向上。しかしカエルは動くものにしか興味を示さないため、ピンセットで動かしながら与える工夫が必要です。食性の“クセ”は個体ごとに大きく異なります。
2-3. 現代飼育の新常識「イエアメガエルバイト」
「イエアメガエルバイト」は、コオロギ粉末を90〜95%と高配合したイエアメガエル専用フード。魚粉を使わないことで消化の負担を軽減し、必要な栄養素を配合した「総合栄養食」です。
粉末を水で練るだけで簡単に使え、ベビーからアダルトまで対応。常温で長期保存も可能。生き餌しか食べなかった個体が受け入れる例もあり、飼育者の強い味方です。
栄養補助も可能ですが、量は少量にしましょう。

🌿 飼育者のひとり言
様々な餌がありますよね。我が家では生餌メインの子と人工餌オンリーの子がいます。生餌は管理とダスティングが大変ですが、人工餌、特にイエアメガエルバイトはダスティング不要で本当に楽です。
2-4. 給餌頻度と食べ過ぎ防止のコツ
イエアメガエルは食欲旺盛ですが、“与えすぎ”は禁物です。給餌の頻度や量は、年齢・体格・季節で調整します。
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幼体(体長6cm未満):毎日こまめに。成長に多くの栄養が必要です。
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成体(体長6cm以上):2〜3日に1回程度。肥満防止のため量の調整が重要です。
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冬場:代謝が落ちるため週に1回程度に減らしましょう。
もうひとつ注意すべきは「拒食」です。環境の変化やストレス、不衛生な環境など原因は様々。カエルの死因で最も多いのが「餓死」とされており、環境を見直すことが重要です。拒食が見られたら焦らず、安心できる環境づくりに努めましょう。
日々の観察を通して「年齢・体格・季節」に応じた調整と、「個体の状態をよく観察する目」が健康管理の鍵となります。
飼育環境と健康管理 🏡
3-1. 飼育下での環境設計のポイント
イエアメガエルは樹上性のため、高さのある空間が何より重要です。ケージは縦長タイプ(高さ45cm以上推奨)を選び、登り木などで立体的に活動できるレイアウトにしましょう。床材は清潔を保ちやすいキッチンペーパー等が効果的です。また、皮膚から水分を吸収するため、全身が浸かれる清潔な水入れを必ず設置し、毎日水を交換してください。
3-2. 温度と湿度の管理で健康を守る!🌡️💧
温度変化や乾燥は体調不良に直結します。
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温度:約25℃を維持。エアコン管理が最適です。20℃以下は拒食の原因になります。
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湿度:60〜80%が理想。毎日の霧吹きで調整します。
温度計と湿度計は必ず設置し、日々の数値をチェックする習慣が、カエルの健康を守る鍵となります。
3-3. 飼育時に注意したい課題とトラブル対策 ⚠️
イエアメガエルは丈夫ですが、適切な管理が不可欠です。起こりがちなトラブルを知り、対策を講じましょう。
・くる病:カルシウム・ビタミンD3不足が原因。ダスティング等で予防。
・レッドレッグ(赤肢病):不衛生な環境による細菌感染。ケージを清潔に保つことが最善の予防。
・消化器トラブル:餌の与えすぎや床材の誤飲に注意。給餌は2〜3日に1回。
・脱走:ジャンプ力が強いので、ケージのフタは確実に閉める。
・鳴き声:オスの夜鳴きは大きい場合があるため、設置場所に配慮。
・個体選び:初心者には、丈夫で管理しやすい人工繁殖(CB)の体長4cm以上の個体がおすすめ。
カエルにとっても飼い主にとっても快適な生活のためには、日々の観察と丁寧なケアが何よりのカギとなるのです。

💬 よくある質問(FAQ)
Q1. イエアメガエルは人に慣れますか?
→ はい、比較的よく慣れます。ピンセット給餌などに慣れる個体も多いです。しかし、人間の体温ではやけどを引き起こす場合もありますのでハンドリングをする際は注意しましょう。
Q2. イエアメガエルの平均寿命は?
→ 飼育下では10〜15年ほど。管理状態によってはさらに長生きします。
Q3. イエアメガエルは飼いやすいカエルですか?
→ はい。温度・湿度・清潔を保てば、初心者でも飼いやすい種類です。
Q4. イエアメガエルは臭いますか?
→ 生体自体は、基本的に臭いはほぼありません。しかし、糞や食べ残しなどが臭いの発生源になるため、水やケージの掃除を怠らなければ無臭です。