ニホンヤモリ飼育入門ガイド
0. はじめに
夜の窓ガラスや外壁にぴたっと張りつく小さな影――それが「ニホンヤモリ」です。
昔から「家を守る」と書くように、幸運の象徴として親しまれてきた身近な爬虫類です
犬や猫のように人に甘えることはありませんが、時間をかけてゆっくり接すれば“慣れてくれる”生き物です。飼い主を怖がらず、ピンセットから餌を食べたり、隠れずに姿を見せてくれるようになると、その小さな変化が何より嬉しく感じられるでしょう。
このブログでは、そんなニホンヤモリと穏やかに暮らすためのコツを、初心者にもわかりやすく紹介します。
飼育環境の整え方から、慣らし方、餌の工夫、健康管理のポイントまで――「はじめてのヤモリ飼育」に役立つ知識を丁寧にまとめました。
小さな命と向き合いながら、少しずつ信頼関係を育てていく。
その過程こそが、ニホンヤモリを飼う一番の魅力かもしれません。

1. ニホンヤモリってどんな生き物?
ニホンヤモリ(学名:Gekko japonicus)(ゲッコー・ヤポニクス)は、日本各地の町や住宅地で見られる夜行性の小型ヤモリです。体の大きさは全長10〜14センチほどで、しなやかな体と大きな目が特徴です。昼間は壁のすき間や石の裏などでじっと休み、夜になると虫を探して静かに活動を始めます。
このヤモリが垂直な壁やガラスの上を自由に歩けるのは、足の裏にある「趾下薄板(しかはくばん)」という特殊な構造のおかげです。そこには約650万本もの微細な毛が生えており、分子の引き合う力(ファンデルワールス力)によって壁に吸いつくように移動できます。滑り落ちないのは「吸盤」ではなく、ナノレベルの物理現象によるものなのです。
ニホンヤモリは、人の暮らしの近くで生きる爬虫類です。山の奥や原生林ではあまり見られず、むしろ街灯や窓ガラスの明かりに集まる虫を狙って、人家の周囲に定着しています。名前の「家守(ヤモリ)」も、そうした生活習性から生まれたものです。
性格はとても神経質で臆病ですが、警戒心が強い一方で環境への適応力も高く、都市部でも繁殖しています。日中の強い日差しや天敵を避けるため、夜間に行動する「夜行性」という生活リズムを持ち、暗い場所でも虫を見分けられるように発達した目をもっています。
寿命は5〜10年ほどといわれ、飼育環境が安定していれば10年以上生きることもあります。
体の構造や行動のしくみを知ると、ニホンヤモリはただの“家の壁にいる生き物”ではなく、身近な環境に見事に適応した、たいへん興味深い存在だということが分かります。
2. まずは環境づくり(ストレスを最小化=慣れの土台)
ニホンヤモリを飼ううえで、最も大切なのは「落ち着ける環境をつくること」です。
ヤモリはとても繊細で、物音や振動、人の視線にも敏感に反応します。安心して過ごせる環境が整っていなければ、餌を食べなかったり、隠れて出てこなくなったりすることもあります。
ここでは、ヤモリが快適に過ごし、人に慣れやすくなるための環境づくりの基本を紹介します。
2-1ケージとレイアウト
まず、飼育ケースは静かな部屋に置きましょう。
人が頻繁に通る場所や、テレビ・スピーカーの近くなどは避け、音や振動の少ない環境を選ぶことが大切です。ヤモリにとって、突然の物音や人影は強いストレスになります。
ケージの形は、高さのあるタイプがおすすめです。ニホンヤモリは木の幹や壁を登って生活する樹上性の生き物なので、横幅よりも高さを重視しましょう。前面が開くタイプのケージを使えば、お世話の際に上から手を入れる必要がなく、ヤモリを驚かせずに作業ができます。
ヤモリが安心できる「隠れ家」は必ず用意します。流木やコルクの皮、トイレットペーパーの芯など、ヤモリがちょうど入れる大きさのものを選びましょう。
飼い始めのうちは複数の隠れ場所を設置してあげると落ち着きやすく、慣れてきたらヤモリがよく使うお気に入りの隠れ家だけを残すと観察しやすくなります。
床材はキッチンペーパーや新聞紙が清潔で扱いやすく、初心者におすすめです。掃除も簡単で、ヤモリの健康状態(フンや尿の様子)も確認しやすいのが利点です。
一方で、砂や細かいチップ状の床材は誤って口に入る危険があり、また足に付着して登りづらくなることもあるため、避けたほうがよいでしょう。
2-2温度・湿度・明るさ
ヤモリは変温動物のため、体温を外の環境に合わせて調整します。
適切な温度と湿度を保つことで、活発に動き、健康を維持できます。
温度の目安はおおよそ18〜28℃(理想は25℃前後)です。
冬場はパネルヒーターや保温球でケージの一部を温め、温度に勾配(あたたかい場所と涼しい場所)をつくりましょう。ヤモリが自分で快適な場所を選べるようにしておくことがポイントです。
30℃を超えてもすぐに体調を崩すわけではありませんが、35℃を超えると強いストレスとなり、熱中症の危険もあります。夏は部屋ごとエアコンで温度管理を行うと安心です。
湿度は50〜80%を目安にします。特に脱皮の前後は湿度が高いほうがスムーズに皮がはがれるため、霧吹きをして湿度を上げましょう。
ただし、ヤモリの体に直接霧吹きをかけるのはNGです。びっくりして逃げたり、ストレスで食欲が落ちたりすることがあります。ケージの壁や隠れ家に軽く吹きかけるようにしましょう。
照明については、ニホンヤモリは夜行性のため、昼間の強いライトは必要ありません。日中は部屋の自然光程度で十分です。
紫外線ライト(UVBライト)も必須ではありませんが、使わない場合はビタミンD₃を含むサプリメントでカルシウム吸収を補いましょう。夜間は照明を消すか、月明かり程度の弱い光にして、自然な昼夜のリズムを保ってあげることが大切です。
3.ケージ選びとレイアウトの徹底ガイド
ニホンヤモリを安心して飼うための第一歩は、住みやすい“家づくり”。
どんなケージを選び、どう配置するかによって、ヤモリのストレスや健康状態が大きく変わります。ここでは、飼育経験の浅い人でも失敗しないための、ケージ選びとレイアウトのポイントを徹底解説します。
①ケージのサイズと形状
ヤモリは登るのが大好きな樹上性の生き物。
そのため、ケージを選ぶときは「横幅より高さ」を重視します。目安としては、成体1匹あたり高さ30cm以上・幅20cm程度が理想。特に初めての飼育では、観察のしやすいガラス製ケージが扱いやすいでしょう。
上から手を入れるタイプよりも、前面開きのケージのほうが圧倒的におすすめです。
上から手を伸ばすと天敵に襲われる感覚を与えてしまうため、ヤモリが驚いて逃げたり、しっぽを自切したりするリスクがあります。前開きであれば作業音も小さく、掃除や給餌も静かに行えます。

②通気性と湿度のバランス
ヤモリは高湿度を好みますが、同時に通気性の悪さにも弱い生き物です。
湿度がこもりすぎるとカビが生えやすく、ダニや雑菌の原因になります。
理想は、側面か天面に十分な通気穴があるタイプ。保湿性と換気性のバランスがとれているケージを選びましょう。
プラスチック製ケースは軽くて扱いやすい反面、湿気がこもりやすいこともあるため、霧吹きの回数や換気をこまめに調整します。
③隠れ家の配置と種類
ヤモリにとって、隠れ家は「安全地帯」。
飼い始めの不安定な時期は特に、落ち着ける隠れ場所を複数用意してあげましょう。
- 天然コルク
- 小さな流木
- 紙製の筒(トイレットペーパー芯など)
など、自然に近い素材や形状のものがおすすめです。ヤモリが自分の好きな隠れ場所を選べるように2〜3か所設置しておき、慣れてきたらお気に入りの場所を残すと観察がしやすくなります。
また、湿度を保ちやすい「ウェットシェルター」を1つ入れておくと、脱皮不全の予防にも役立ちます。
■ レイアウトのポイント
レイアウトは、「登る」「隠れる」「休む」を意識して組み立てるのがコツです。
流木や枝を斜めに設置すると登りやすく、隠れ家の出入りもスムーズになります。
また、ケージの手前側は少し空間を広く残すと、観察やピンセット給餌がしやすくなります。
毎日掃除をしやすいように、物の配置はシンプルに。見た目だけを重視しすぎると、通気が悪くなったり掃除が大変になったりします。ヤモリが自由に動けることが最優先です。
ケージの基本仕様
| 項目 | 推奨内容 | 理由・ポイント |
|---|---|---|
| サイズ | 高さ30cm以上 × 幅20cm程度(成体1匹あたり) | ヤモリは樹上性で、登るスペースが重要。 |
| 形状 | 前面開きケージ | 上からの手入れは「捕食者」に見えてストレス。作業も静かで安全。 |
| 材質 | ガラス製が理想(初飼育向け) | 観察しやすく、湿度と温度の安定性が高い。 |
| 通気性 | 側面または上部に通気穴があるタイプ | 湿度を保ちながらもカビ・ダニ予防。 |
| 湿度管理 | 50〜80%を維持 | 高湿度を好むが、こもりすぎに注意。 |
| 設置場所 | 静かで人通り・振動の少ない部屋 | ストレスを減らし、慣れやすくする。 |
隠れ家の設置と種類
| 素材 | 特徴 | 備考 |
|---|---|---|
| 天然コルク | 通気・保湿バランス◎。自然な見た目。 | 汚れても乾燥で再利用可。 |
| 流木 | 登りやすく、レイアウト映え。 | 傷防止に角を削って使用。 |
| トイレットペーパー芯(紙筒) | 手軽で軽量。掃除時に交換しやすい。 | 暫定的な隠れ家にも最適。 |
| ウェットシェルター | 内部を湿らせて脱皮不全を予防。 | 脱皮期・乾燥期に特に有効。 |
✅ 設置数の目安:2〜3か所 → 慣れてきたらお気に入り1か所を残す。
レイアウトのポイント
| 要素 | コツ | 効果 |
|---|---|---|
| 登る | 流木や枝を「斜め」に配置 | 登りやすく、運動量アップ。 |
| 隠れる | 背面や角に隠れ家を設置 | 安心感を得てストレス軽減。 |
| 休む | 平らな枝や板も1枚あると◎ | 夜行性の休憩スペースに。 |
| 前面スペース | 手前を空けておく | 給餌・観察がしやすい。 |
| 掃除のしやすさ | 物は少なめ・配置はシンプル | 衛生維持と観察性の両立。 |
飼育者メモ
- 「見た目」よりもヤモリの行動のしやすさを優先。
- レイアウトは“登る・隠れる・休む”の3要素を必ず確保。
- 通気口の位置で湿度の保ち方が変わるので、季節に応じて霧吹き回数を調整。
- プラスチックケースを使う場合は換気+こまめな掃除を徹底
4. 飼い始めの接し方
ニホンヤモリをお迎えした直後は、とにかく「そっとしておく」ことがいちばん大切です。
捕まえられたばかりのヤモリにとって、新しい環境はまさに未知の世界。人の手、光、音、振動――すべてがストレスの原因になります。
ここでは、ヤモリが安心して暮らしはじめるための「最初の3日間」と「最初の1〜3か月」の過ごし方を紹介します。
ヤモリを迎えたら、まずはケージを静かな場所に設置し、暗く静かな環境でそっとしておきましょう。 この期間は、霧吹きだけで十分です。水分補給と湿度維持のために、ケージの壁や隠れ家に軽く水を吹きかける程度でOK。
この3日間は、覗き込みたくなる気持ちをぐっと我慢して、ヤモリが「ここは安全そうだ」と感じる時間を与えてあげましょう。 無理に姿を見ようとすると、警戒心が強まり、慣れるまでの時間が長くなってしまいます。
ヤモリが新しい環境に少し慣れてきたら、次は人の存在に慣らす段階に入ります。
最初の1〜3か月に大切なのは、「静かに・短く・同じリズムで」お世話を続けることです。
掃除や餌やりなどの作業は、なるべく静かに、短時間で済ませるようにしましょう。ゆっくりとした動作を心がければ、ヤモリを驚かせずにすみます。ケージのフタも、開閉音が少ないものを選ぶと安心です。小さな音や振動でも、ヤモリにとっては強い刺激になります。私たちが気にも留めないような服の擦れる音や、椅子を引く音、足音の振動でさえも、ヤモリには「危険が近づいてきた」と感じられてしまうのです。
また、絶対に避けたいのが「人=怖い」という印象を与えること。
動かないからといって手でつかんだり、隠れ家から無理に引っ張り出したりしてはいけません。ヤモリが自分のタイミングで出てくるのを、静かに待ってあげることが大切です。
ヤモリは環境の変化にとても敏感ですが、人間が穏やかに、一定のリズムで接していれば、少しずつ「この人は危険じゃない」と学習していきます。焦らず、毎日の小さな積み重ねを通して、ゆっくりと信頼を築いていきましょう。
最初の3日間:完全にそっとしておく
| 行動 | 内容 | ポイント |
|---|---|---|
| 設置 | ケージを静かな部屋に設置(人通り・音・振動の少ない場所) | 「安全な環境だ」と感じさせる |
| 管理 | 霧吹きのみ(壁や隠れ家に軽く水を吹く) | 水分補給+湿度キープ |
| NG行為 | 覗く/触る/移動させる | 強いストレスの原因になる |
| 目的 | 新しい環境に慣れる | 「ここは安全だ」と学習させる |
我慢がカギ!
この3日で“安全な場所”と覚えてもらえるかどうかが、今後の慣れ方を左右します。
1〜3か月目:人の存在に慣らす期間
| 行動 | 内容 | ポイント |
|---|---|---|
| 作業 | 掃除・給餌は静かに短時間で | “静かに・短く・同じリズムで”が合言葉 |
| フタの音対策 | 静音タイプのケージを選ぶ | 「ガタッ」という音でも驚く |
| 動作 | ゆっくりとした手の動きで | ヤモリの視界に入る位置から |
| 音と振動 | 服の擦れる音、足音、椅子を引く音も刺激に | 環境音に注意して行動 |
| 慣れのサイン | 隠れ家から出る時間が増える/ピンセットに反応する | 恐怖→安心への切り替えサイン |
絶対にNGな行動
- 手でつかむ
- 隠れ家から無理に出す
- 驚かせる(急な動き・音)
- 長時間ライトを当てる
➡ 一度「人=怖い」と覚えると、慣れるまで数倍の時間がかかります。

飼育者のひとり言
正直、最初のころは「全然出てこないし、これで大丈夫かな?」って不安になると思います。 最初のうちはケージの扉を開けるだけで大慌てでケージ内を駆け回る様子も見られました。でも、それが野生個体だと普通なんですよね。こっちが静かにしてると、ふっと出てきて、チラッと姿を見せてくれたりもします。焦らないように、のんびりとニホンヤモリが慣れてくれるのを待つのがいいですね。
5. 主な餌の種類と特徴
ヤモリの健康を保つうえで、「どんな餌をどう与えるか」は非常に重要です。
同じように見える餌でも、それぞれに長所と短所があり、使い方を間違えると栄養不足や偏食につながることもあります。ここでは、生餌・冷凍餌・人工餌の3タイプの特徴と使い分けを詳しく見ていきましょう。
① 生餌(コオロギ/デュビア/レッドローチ/ショウジョウバエなど)
最も本能を刺激するのが、動く餌=生餌です。ヤモリは動くものに素早く反応し、狙いを定めて飛びかかる習性を持っています。そのため、生餌は食いつき最強の存在。飼い始めや人工餌への切り替え時など、警戒心が強い個体を慣らすときの“切り札”です。
ただし、管理の手間がかかる点は覚悟が必要です。
餌用コオロギやデュビアは生き物なので、温度や湿度の管理、脱走対策が欠かせません。また、生餌だけを与え続けるとカルシウム不足に陥りやすく、骨格の弱化(くる病)などを引き起こす恐れがあります。
そのため、生餌は「導入期や拒食時の起点」「人工餌へのブリッジ」として使うのがおすすめです。最初は生餌で安心させ、徐々に人工餌へ移行していきましょう。
② 冷凍餌(冷凍コオロギ・アカムシなど)
冷凍餌は、手間を減らしたい人にぴったりの選択肢です。
あらかじめ冷凍保存できるため、管理が楽で衛生的。価格も安定しており、ストックしておけば必要なときにすぐ使えます。
ただし、動かない=食欲を刺激しにくいという弱点があります。
嗜好性を高めるためには、少し工夫が必要です。たヤモリは「動いているように見える餌」に興味を持ち、食いつきが格段に良くなります。冷凍餌は、生餌管理の負担を減らしたい人や、人工餌へスムーズに移行したい個体にとても有効です。
③ 人工餌(ニホンヤモリバイト)
人工餌は、最も扱いやすく、現代のヤモリ飼育で主流になりつつあるタイプです。
開封してすぐ使えるため、準備が早く、汚れも少ないのが大きな利点です。また、水を加えて練るタイプの餌であれば、粒の大きさや硬さを自由に調整できるので、幼体から成体まで対応可能。置き餌としても使えるため、夜行性のヤモリにはとても便利です。
これは昆虫粉末を主原料とした高タンパク設計の人工飼料で、ヤモリの嗜好性と消化性の両方を考慮して作られています。特に、昆虫原料の割合が高く(例:95%)、匂いで食欲を引き出す点が特徴です。
ただし、慣れるまで少し時間がかかることもあります。その場合は、最初に“濃い匂い”の状態で与え、徐々に薄めていくのがコツです。
また、生餌の汁を少し混ぜて“生き物の匂い”を再現するのも効果的です。こうした工夫で、自然に人工餌へ移行させることができます。
人工餌は非常に便利ですが、それだけで長期間与え続けると栄養が偏ることもあります。数種類の餌をローテーションしたり、時々生餌を混ぜたりして、バランスを保ちましょう。
5-1 サプリと栄養強化(必須パート)
どの餌を選んでも、カルシウムとビタミン補給は必須です。
特に夜行性のヤモリは日光(紫外線)を浴びる機会が少ないため、ビタミンD₃入りのカルシウム剤を主体に使います。D₃はカルシウムの吸収を助け、骨や筋肉の形成に欠かせません。
- Caパウダー(D₃入り):普段の給餌時に軽くまぶす
- D₃なしタイプ:D₃剤を併用している場合に使う(使い分けが大事)
- マルチビタミン:週1回の目安でOK。脂溶性の過剰摂取に注意
さらに、ガットローディング(餌昆虫への栄養補給)も忘れずに。
給餌の24〜48時間前に、Ca8%以上の栄養価の高いフードをコオロギやデュビアに与え、体内に栄養を蓄えさせてからヤモリに食べさせます。これは生餌から人工餌へ移行する期間にも続けておくと効果的です。
5-2 給餌頻度と量(目安)
| 区分 | 頻度 | ポイント |
|---|---|---|
| ベビー(幼体) | 毎日〜隔日 | 小さい餌を腹八分まで。成長期なので栄養を切らさないように。 |
| アダルト(成体) | 週2〜3回 | 食べ過ぎ注意。腹部が膨らみすぎないよう観察。 |
| 繁殖期メス | 頻度・量ともに増やす | 卵づくりにカルシウムを多く消費するので、カルシウムの強化を忘れずに。 |
食欲の目安は、体重・糞の状態・腹部の張り具合で判断します。
どの段階でも「食べ残しを翌日に持ち越さない」ことが鉄則。生餌が残ると、ヤモリの尾をかじったり、環境を不衛生にしたりすることがあります。
6.冬眠は必要か?
ニホンヤモリは本来、冬になると活動を休止する“休眠型”の爬虫類です。
野生下では、11月〜3月ごろの寒い季節に石の隙間や壁の裂け目、屋根裏などでじっと動かず冬を越します。
つまり、彼らにとって冬眠は自然なサイクルのひとつ。
しかし、飼育下では必ずしも冬眠をさせる必要はありません。
冬眠させるメリットとリスク
〈メリット〉
- 自然のリズムに近い生活ができる
- 体調が良い個体では、繁殖期(春)の発情や行動が活性化しやすい
〈リスク〉
- 体力の少ない個体や幼体は、低温で消耗して衰弱する可能性がある
- 温度管理を誤ると「中途半端な冬眠」になり、代謝だけ下がって食べずに弱るケースも
特に室内飼育の場合は、気温が中途半端に上下するため、“冬眠させようとしたのに完全に眠らない”という状態が起こりやすく危険です。
飼育下では「緩やかな冬越し」がおすすめ
完全な冬眠よりも、“低温での静かな冬越し”が安全です。
たとえば、冬の間は室温を20℃前後に保ち、照明時間を少し短くして活動量を抑えます。
この方法なら、ヤモリの生理リズムを壊さず、健康状態も安定させやすいです。
また、冬の時期は食欲が落ちるのが自然な反応。
無理に食べさせず、1〜2週間に1度軽く餌を見せる程度でOKです。
排泄や体重の変化を観察しながら、静かな環境で穏やかに過ごさせましょう。
冬眠させてよいケース・避けるべきケース
| 状況 | 冬眠させてもよい | 冬眠させないほうがよい |
|---|---|---|
| 成体・健康体 | ◎(自然なリズムを体験) | – |
| 幼体(1年未満) | ×(体力不足で危険) | ◎ |
| 病み上がり・食欲低下個体 | × | ◎ |
| 室温が一定に保てない環境 | × | ◎(加温を維持) |
Q&A
Q1. ヤモリって“なつく”んですか?
A. 犬や猫のようにスキンシップでなつくことはありません。
でも、人の存在に慣れることは十分にあります。
毎日同じペースで静かに世話をしていると、少しずつ“この人は怖くない”と学習していきます。そのうち、あなたが近づくと隠れずに顔を出したり、ピンセットを見て寄ってきたりします。
Q2. 餌を食べてくれないときはどうしたらいいですか?
A. まずは環境を見直すことが大切です。
温度が低い、照明が明るすぎる、物音が多いなど、小さな要因でも、ヤモリは警戒して食べなくなります。
一晩中何も食べないことも珍しくありませんが、落ち着いた環境で数日様子を見れば、ほとんどの個体は食欲を取り戻します。
どうしても長く続く場合は、生餌を使って“食べるスイッチ”を入れてあげましょう。
Q3. 触っても大丈夫?
A. 短時間であれば問題ありませんが、無理に触らないのが基本です。ヤモリにとって人の手は巨大な捕食者そのもの。
どうしても必要なとき(掃除・移動・通院など)だけ、そっと下からすくい上げるように持ちましょう。背中やしっぽをつかむと、自切(しっぽが切れる)することがあるので注意してください。
Q4. 脱皮がうまくいかないときは?
A. それは湿度不足のサインです。霧吹きをこまめに行い、ウェットシェルターや湿ったコケを設置してあげましょう。皮が一部残った場合は、濡らしたティッシュを近くに置き、自然にはがれるのを待ちます。無理に剥ğ















