
秋から冬にかけて気温が下がってくると、飼育しているニホンヤモリの動きが鈍くなったり、餌を食べる量が減ったりして心配になることはありませんか?
「そろそろ冬眠の時期なのかな?」「どうやって冬眠させればいいの?」とネットで検索し、悩んでいる飼育者の方は少なくありません。しかし、SNSなどでは「冬眠に失敗してしまった」「春になっても起きてこなかった…」という悲痛な声が毎年多く見受けられます。
実は、飼育下のニホンヤモリを「冬眠」させることには、非常に大きな落とし穴とリスクが潜んでいます。この記事では、なぜニホンヤモリの冬眠が危険なのかという生態的な理由と、小さな命を守るための「正しい冬越しの方法」について、具体的に解説していきます。
ニホンヤモリは「加温飼育」で冬を越すのが正解です!

忙しい方のために、まず結論からお伝えします。
- ニホンヤモリは完全な「冬眠」ができない生き物です。
- 飼育下でヒーターを使わず冬眠させようとすると、餓死や乾燥死のリスクが極めて高くなります。
- 正解は、パネルヒーター等を使用して「加温飼育」で冬を越すことです。
- 冬場はケージ内の温度・湿度管理に加え、「餌の温度」にも注意が必要です。
なぜニホンヤモリは冬眠に失敗しやすいのか?

「野生のヤモリは外で冬を越しているのだから、冬眠できるはず」と思うかもしれません。しかし、ここには大きな誤解があります。
ニホンヤモリは「完全な冬眠」ができない
ニホンヤモリは、古く平安時代に大陸から日本へやってきた「外来種」だと考えられています。日本古来の在来種(ニホントカゲなど)とは異なり、日本の厳しい冬を完全に眠ってやり過ごす生態的メカニズムを持ち合わせていません。
野生下のヤモリは、凍え死なない程度の温度が保たれた隙間を自力で見つけ、ギリギリの状態で耐え忍んでいるだけなのです。
冬眠中も「水」は飲む
「冬眠中は何も食べず飲まずでずっと寝ている」というのも勘違いです。ニホンヤモリは寒い時期でも時折目を覚まし、水分を補給します。これを人間が人為的にコントロールし、安全な「ギリギリの温度」と「適切な湿度」を数ヶ月間キープすることは、一般の家庭環境では非常に困難です。
間違った対処法・よくある冬越しの失敗

良かれと思ってやったことが、ヤモリにとって致命的なダメージになることがあります。以下は冬によくある失敗例です。
1. 寒い部屋に放置する(中途半端な温度)
「冬眠させよう」と暖房のない部屋や玄関にケージを置くのは危険です。室温が15℃〜20℃前後と中途半端に高いと、ヤモリの代謝が完全に落ちきりません。活動エネルギーを消費するのに餌は食べないという状態が続き、春を待たずに餓死してしまいます。
2. 水分補給を怠る(乾燥によるミイラ化)
冬眠状態だからと霧吹きをやめてしまうと、ケージ内が乾燥します。水分が摂れなくなったヤモリは、そのまま脱水症状に陥り、最悪の場合はミイラ化して命を落としてしまいます。
3. 冷え切った餌を与えてしまう
加温飼育に切り替えてヤモリの体温が保たれていても、「餌の温度」が盲点になりがちです。冬の室温(10℃台など)で冷え切った人工飼料や生き餌をそのまま与えると、小さなヤモリの体温は急激に奪われます。これがストレスとなり、数口で食べるのをやめてしまったり、消化不良(便秘や吐き戻し)を起こす原因になります。
正しい解決策:安全な冬越しのための3つの手順
ニホンヤモリの命を確実に守るためには、冬眠(無加温)というギャンブルを避け、ヒーターを用いた「加温飼育」を行うのが最も安全で合理的な選択です。
手順1:パネルヒーターで温度勾配を作る

爬虫類用のパネルヒーターをケージの底面や側面に設置します。ケージ全体を温めるのではなく、ケージの1/3〜半分程度が温まるように配置し、ヤモリ自身が好きな温度帯を選べる「温度勾配」を作ることが重要です。日中は25℃前後、夜間も20℃を下回らないように管理しましょう。
手順2:こまめな霧吹きで湿度を保つ

冬は暖房やヒーターの影響でケージ内が急激に乾燥します。乾燥は脱皮不全や脱水の原因になるため、朝晩の1日2回、ケージの壁面に細かい水滴をつけるように霧吹きを行ってください。湿度は50〜80%程度を目安にします。
手順3:餌は「少し温めてから」与える

冬場でもしっかり食べてもらうために、餌をヤモリの体温と同じか、それより少しだけ高い温度(触って冷たくない程度のぬるさ)にしてから与えましょう。
- 人工飼料の場合: 水ではなく「ぬるま湯」でふやかすか、練った後にパネルヒーターの端に少し置いて温めるのが効果的です。
- 生き餌の場合: 飼育ケージのある暖かい部屋(または温室)にしばらく置き、虫自体の温度と活動力を少し上げてから与えます。
※食欲が落ちてしまった場合の選択肢
冬場はヒーターを入れていても、季節の変化を感じ取って食欲が落ちる個体がいます。活餌への反応が鈍くなった場合は、匂いが強く本能を刺激する餌に切り替えるのも有効です。
たとえば、ニホンヤモリが野生下でよく遭遇するハエ目昆虫(ミズアブなど)やコオロギを主原料とした練り餌(ヤモリバイトなど)は、嗜好性が高く、お湯で練ることで香りが立ちやすくなります。どうしても食べない時期のサポート食として、こうした専用フードを選択肢に持っておくと安心です。
ケース別:こんな時はどうする?
Q. すでに寒さで動きが鈍くなっているヤモリを保護した場合は?
急に暖かいヒーターの真上に置くのは、急激な温度変化によるショック(負担)が大きいため危険です。まずは15℃〜20℃程度の室温の部屋に置き、徐々に25℃の適温へと体を慣らしてあげてください。水分補給の霧吹きも忘れずに行いましょう。
Q. 加温しているのに全く食べず、痩せてきてしまった
環境を整えても2週間以上食べず、尻尾が細くなってきた場合は注意が必要です。そのまま放置せず、流動食状にした餌をシリンジ等で口元に垂らし、舐めとらせる給餌(サポート給餌)を検討してください。その際、腸内環境をサポートする爬虫類用の乳酸菌(レプケアなど)を併用すると、コンディションの維持に役立ちます。
まとめ:冬は「観察」と「保温」の季節
この記事の重要なポイントを振り返ります。
- ニホンヤモリに「冬眠」を強いるのは極めてハイリスク。
- 冬はパネルヒーターを活用し、20℃〜25℃の加温飼育を行う。
- 乾燥に注意し、朝晩の霧吹きで湿度を保つ。
- 与える餌(人工餌・生き餌)は冷たいままにせず、少し温めてから給餌する。
小さなヤモリにとって、日本の冬の寒さは命に関わる試練です。「自然界では冬眠しているから」というイメージに引っ張られず、飼育下だからこそできる安全な環境(ヒーターによる加温)を用意してあげてください。
まずは、飼育ケージの温度計と湿度計をチェックし、適切な保温ができているか確認することから始めましょう。しっかりと環境を整えれば、ヤモリは冬でもあなたに元気な姿を見せてくれるはずです。















